グアンタナモ、僕達が見た真実 ~ 民主主義を守るために法を破る

グアンタナモ

トム・クルーズ主演の「インポッシブル フォールアウト」(2018年公開)を楽しんでいたら、作品の中で登場するアメリカ政府高官が「グアンタナモ」という単語を使いました。

つまり娯楽映画ですら「グアンタナモ」という単語を知らないと理解できないということです。

あなたはグアンタナモという単語を聞いて、なんのことか理解できますか?

おそらく日本人のほとんどは「知らない」でしょうが、グローバル社会で生きる人間としてグアンタナモのことを知らないのは「ちょっと恥ずかしい」と思います。

グアンタナモについて詳しく知りたい方は、これから紹介する映画『グアンタナモ、僕達が見た真実』を鑑賞してほしいですが、鑑賞する余裕がなければ、本記事だけでも最後までお付き合いください。

グアンタナモ、僕達が見た真実

あらすじ

友人の結婚式に参加するために、イギリスからパキスタンへの旅に出発た3人の青年たち。

青年たちは「パキスタンまで来たのだから、アフガニスタンの実情を知りたい。」という好奇心を抑えることができません。

しかしその好奇心が青年たちの運命を変えてしまいます。青年たちはアフガニスタンへの国境を超えるのですが、タリバンへの空爆に巻き込まれるなど大変な目に遭ってしまうのでした。

命からがら生き残った青年たちは、心の底からイギリスに帰国したいと願うのですが、「テロリスト」として監禁されてしまうのでした。

青年たちの運命はどうなってしまうのか・・・

治外法権区域

グアンタナモ収容所とは、2001年のアメリカ同時多発テロをきっかけに設置されたテロ関連容疑者の収容施設です。

グアンタナモ収容所は、キューバ南東部グアンタナモ湾岸のアメリカ軍敷地内にあります。つまりグアンタナモは米国の軍法によって支配された「治外法権区域」だということです。

グアンタナモ収容所では人権は完全に無視され、拷問や虐待が繰り返されているため、国連は収容所の閉鎖を勧告していますし、アメリカ連邦裁判所も違憲判決を下しています。

ブッシュ政権からオバマ政権に変わり、オバマ大統領は1年以内に収容所を閉鎖する大統領令に署名もしました。

しかし2009年12月の旅客機爆破テロ未遂事件の容疑者のなかに、グアンタナモ収容所から釈放された者が含まれていたことから、連邦議会が閉鎖に反対、いまだに閉鎖の目途はたっていません。

法秩序にも前提がある

グアンタナモ収容所は多くの人にショックを与えました。なぜならば「法秩序を守るためには法をやぶらなければいけない」という常識が、白日の下にさらされてしまったからです。

何かを守るためには、何かを犠牲にしなければいけないということは珍しくありません。しかし現実問題として、そんなことをわたしたちは知りたくはありません。だから不都合な真実に目をそらしながら、わたしたちは文明社会を生きています。

しかしグアンタナモ収容所の存在は、「知らないままでいたい」という一般人の切実な希望を粉々にぶっ壊してしまいました。

非人道的な施設があることを知ってしまった以上、「人権を守れ!グアンタナモ収容所は廃止だ!」という非難の声は強くなるばかりですが、残念ながら「いまさら、やめられない」のもまた事実なのです。

なぜならば、グアンタナモ収容所への収容が長引けば長引くほど、アメリカへの恨みは強くなります。アメリカへの恨みが強くなれば強くなるほど、復讐テロの危険性は高くなり、結果としてグアンタナモ収容所を閉鎖するわけにはいかなくなるのです。悪循環の連鎖とはまさにこのことです。

わたしたちは安心快適な生活に慣れてしまい、それがさも当然であるかのような錯覚をもってしまいがちですが、「そんなことがあるわけがない」のです。

資本主義も、民主主義も、そもそもは「ありそうもないもの」なのです。そもそもありえないものを「ある」かのように錯覚し続けるためには、不断の努力が必要なのです。