ある日突然、大切な人の命が奪われたら・・・そのようなひと昔前であれば映画やドラマでしか出会えなかったはずの事件ですら、もはや現代では特別感を失っています。
テレビをつければ「暴走した車が信号を無視して・・・」というニュースが流れているし、SNSで探せば悲惨な事件はあちらこちらで見かけます。
地下鉄サリン事件、大震災を経験したわたしたちは「もう何が起こるかわからない」という状態が常態化していることに、もう気づいてしまったのです。
一部の人たちは「ルールをもっと強化すれば100%の安全は確保できる」と主張していますが、そのような主張をマジメに信じることのできた幸せな時代もすでに終焉してしまった。。。というのが、現代人の共通感覚だと思います。
しかしそれでもわたしたちは生きていかなければいけません。不満があっても事件に巻き込まれても、空腹になるし、眠たくなるし、トイレだって我慢できません。
わたしにも「あ~、生きるのって辛いんだなぁ。」と思わざるをえなかった経験は何度がありますし、「どうすれば少しでも楽しく生きることができるのか?」と自問自答しましたが、当時は「これだ!」という答えは見つからず、もがきながら生きてきたというのが正直なところです。
もし、、、、現在のわたしが、過去のわたしの気持ちを前向きにしたいと思うなら、、、迷わずこれから紹介する映画を紹介すると思います。
恋人たち
退屈な日常を送る平凡な主婦、完璧主義でゲイの弁護士、愛する者を不条理に奪われた男が、飲み込めない思いを抱えながらそれでも日常を生きていくというストーリー。
娯楽ではなくアート
理想とする生活とは程遠い状況に置かれる主人公たちは、素人同然の人たちです。少なくともテレビや映画でひっぱりだこのあの俳優さん。。ではありません。
だからこそでしょうか。映画を鑑賞する普通すぎるほど普通なわたしたちは、意外なほど心を揺さぶられます。
そして社会で生きづらさを感じている人ほど「あれ?これってわたしじゃん?」と感情移入してしまうのです。
巷では「スッキリ・スカッとする」系のドラマやバラエティー番組が流行っています。わかりやすい悪者がいて、そいつを土下座させたり、やり込めることで、「スッキリ」するのです。
視聴者をスッキリ・スカッとさせるのは「娯楽番組」の使命です。モヤモヤした心をスッキリさせて、また翌日から労働者として活躍してもらおうというわけです。
とはいえ一部の人たちは「スッキリ・スカッとする」系の情報を懐疑的に見るしかありません。なぜならば自分の身の回りに、わかりやすい悪者が見つからないからです。
そうなると無理矢理にでも悪者を探してきてSNSで攻撃したりします。そう。あらゆることが「娯楽」に成り下がっているのです。
しかしくれぐれもご注意ください。本記事で紹介した映画「恋人たち」は娯楽ではありません。
現状維持のまま癒される
わかりやすい悪者が登場するわけでもなく、悪者をやっつけて平穏な日常を取り戻す・・・めでたしめでたし・・・というエンディングもやってきません。
しかし不思議なことに映画「恋人たち」を鑑賞すると「癒される」のです。繰り返しになりますが、主人公たちの現状は「現状維持」のままです。
それにも関わらず「癒される」という体験をすれば、きっとあなたは「人生を変える一発逆転のなにか」に期待せずとも、幸せになれる「鍵」が映画のなかに隠れていることに気づけるはずです。
「恋人たち」は毎日のつまらなさに絶望している人にほど鑑賞してほしい。。。そんな作品です。