政治と経済の関係 ~ 「持ちつ持たれつ」の歴史

政治と経済の関係

「政治は政治、経済は経済」と割り切ることはできません。なぜならば経済が政治を生み、政治が経済を育てるといういわば「持ちつ持たれつの関係性」がそこには存在するからです。

本記事では「政治と経済は切っても切り離せない」ということをわかりやすく解説します。

「余剰」が出発点

まず最初に理解しておくべきは、農作物の余剰が文字やお金の生みの親であるということです。

文字

世界最古の文字はメソポタミアで誕生しましたが、文字で何を記録していたのでしょうか?

文字で記録していたもの・・・それは・・・農民がそれぞれ共有の倉庫に預けていた穀物の量でした。裏を返せば、農作物の余剰分があったからこそ文字が生まれたのです。

お金

農作物を育てるためには、労働者に働いてもらわなければいけないわけですが、困ったことに労働者が労働するタイミングと、農作物を収穫するタイミングは異なります。

つまり労働者が労働するタイミングが農作物を収穫する「前」である以上、労働者に安心して働いてもらう必要があるのですが、どのようにしてその問題を解決していたのでしょうか?

実はメソポタミア文明の時代にはすでに、労働者ひとりひとりが労働によって将来受け取ることができる穀物の量を台帳に記録していたことがわかっています。

なお台帳には「●●(あなたの名前)は硬貨100個分の穀物を受け取る」というように記載されていたそうですが、驚くべきことに台帳に記載された硬貨が実在するわけではなかったというところも覚えておくといいでしょう。

現代人のわたしたちにとって紙幣や貨幣はあまりにも身近です。ですから「紙幣や貨幣がお金そのもの」であると錯覚してしまいそうになりますが、歴史をたどれば「債権と債務の記録」こそがお金の正体であり、紙幣や貨幣は「債権と債務の記録」をわかりやすくモノにしたものに過ぎないことがご理解いただけるはずです。

お金の歴史

詳しいお金の歴史について興味がある方は、以下の記事も参考にしてください。

お金の歴史お金の歴史 ~ 文字の誕生から中央銀行の設立まで

軍隊・政治家・官僚制度

農作物の余剰が文字やお金を誕生させた・・というところまで説明しましたが、ここでお金を使うすべての人にとって重要な問題となるのは「そもそもお金は信頼できるのか?」という点です。

つまり数字が書き込まれた貝殻や硬貨が存在することと、その貝殻や硬貨を心の底から信用できることとは別の問題であるということです。

その証拠に例えば「農作物を保管した倉庫が敵に襲われたらどうしよう?」とか「貝殻や硬貨と農作物を交換してもらえなかったらどうしょう?」などの不安に襲われれば、その瞬間に貝殻や硬貨という「お金」に価値を感じなくなるはずです。

そう。「お金」の価値を守るためには、「倉庫の警備は万全」であり「約束はちゃんと守ってくれる」という安心がどうしても必要になるのです。

ちなみにMoney Creationという英語は「貨幣創造」と直訳されることなく、「信用創造」と日本語に訳されていますが、あながち間違ってはいません。

たとえ倉庫が敵に襲われても、、、倉庫を管理する支配者が死んだとしても、、、倉庫を管理する番人がいい加減な人間でも、、、お金をもっていれば将来必ず約束の穀物を受け取れるという信頼・信用こそがお金を存在させるためには絶対に必要になるのです。

つまりこれまでの内容をまとめると・・・・・お金の価値を守るためには軍隊が必要であり、約束事(法律)をつくるために政治家が必要であり、約束事を組織的に指導する組織として官僚制度が必要になるということです。

宗教・学問

お金そのものの価値を信用してもらうためには、軍隊・政治家・官僚制度などの権力が必要になることを説明しました。

しかしお金の価値を守る権力が強くなればなるほど、新たな問題が生まれます。それは「格差」です。

トマス・ホッブスやジョン・ロックなどの思想家が考えた『自然状態』においては、力の弱いものでも隙をつけば力の強いものから富を奪う・・・なんてことは可能でしょう。

しかしそのような事態は権力が正常に機能しているかぎりありえないですし、となれば必然的に格差は生まれやすくなります。なぜならば一般的にお金持ちのほうが貧乏人よりも有利にお金を稼ぐことができるからです。

もしあなたが貧乏な暮らしをしているのに、同じ人間が贅沢な暮らしをしている様子を目の当たりにしたらどう思うでしょうか?

「生まれつき裕福な家に生まれたアイツはラッキーで、貧乏人の両親に育てられた自分は不幸だったのだ。」とサッパリと割り切れるでしょうか?

支配者にいくら力があっても権力者は少数しかおらず、治安を守る警察がいくら優秀でも数には勝てません。ですから人口の大半が反乱を起こせば、すぐに転覆するのは目に見えています。

お金がなければ不安になりますが、お金があったらあったで不安になるというのは本当の話なのです。

どうすれば権力者は「お金があることによる不安」をやわらげることができるでしょうか?自分たちの都合のいいように富を蓄積しつづけつつ(格差を拡大しつつ)、庶民に反乱を起こさせないようにできるでしょうか?

答え:権力者が富を独占する権利の正当性を庶民に固く信じさせる

素朴に天国・来世・輪廻転生などを信じることのできた時代においては、宗教がお金持ちの要望を満たしました。

しかし現代人(特に日本人)は、来世で幸せになることよりも現世で幸せになることを望んでいますので宗教の役割は限定的です。

そこで現代社会において宗教の果たしていた役割を代替しているのが「学問」(例えば経済学)です。

例えば「格差を是正しろ!」とか「地球温暖化を阻止しろ!」という要求をすれば、権力者は「ちょっと君。そういうことは経済学を学んでからいいなさい。」いうでしょうし、実際にグレタ・トゥーンベリさんはあの有名なスピーチの後、権力者からそのようなことを指摘されています。

最後に

経済を語るということは、余剰によって社会に生まれるお金(債権と債務の記録)と、お金の価値を守る権力(軍隊・政治家・官僚制度など、広い意味での政治)の複雑な関係について語ることです。

経済と政治は「点と円」の関係に似ています。点は円の中心であり、円は点から等距離にある点の集合です。つまり点と円はお互いがないとお互いを定義できないのです。

同様に、経済がなければ政治はありえず、政治がなければ経済もありえないのです。